米原子力規制委員会(NRC) 約3千ページの内部文書を公表



福島事故、米国では80キロ圏避難検討 米原子力委が詳細議事録
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福島事故、米国では80キロ圏避難検討 米原子力委が詳細議事録

 【ワシントン共同=池内孝夫】米原子力規制委員会(NRC)は21日、東京電力福島第1原発事故発生直後に三つの原子炉の炉心溶融(メルトダウン)や、使用済み燃料プールから大量の放射性物質が漏れることを懸念するやりとりを記した約3千ページの内部文書を公表した。

 昨年3月16日の電話会議で、ヤツコ委員長は「最悪のシナリオはおそらく、三つの原子炉がメルトダウンすること。最終的に格納容器が壊れ、何らかの(放射性物質の)漏出が起きそうだ。漏れの規模を予測するのは難しい」と話した。また「風が東京に向かって吹いている場合、東京にどう影響が及ぶのか」と懸念する出席者に「現時点で(米国民の)退避範囲は、50マイル(約80キロ)でいこうと思うが、不確実であり、拡大する可能性はある」と答えた。

 東日本大震災の発生直後から、事態の深刻さをNRCが認識していたことを示す内容。メルトダウンの可能性を認めようとしなかった日本政府との危機意識の違いが浮き彫りになった形だ。

 12日には80キロ圏の米国民の避難勧告を検討していたことも文書から分かった。ヤツコ委員長は放射性物質の予測が難しい理由として「悪い状況にある使用済み燃料プールが六つもあり、プールが火災を起こすかもしれない」と指摘するなど、緊迫したやりとりが記されている。燃料プールの構造が壊れ、水がなくなっているとの懸念も示された。

 文書は、震災発生から10日間の内部での議論や電子メールのやりとりなどが中心となっている。
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米原子力規制委、福島原発事故巡る記録文書公開
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米原子力規制委、福島原発事故巡る記録文書公開

 【ワシントン=山田哲朗】米原子力規制委員会(NRC)は21日、福島第一原発事故の対応を巡る議論を記録した内部文書3000ページを追加公開した。

 それによると、NRCのヤツコ委員長は、東京に派遣した職員から、4号機の使用済み燃料プールの水が喪失しているとの情報が伝えられたため、米議会で「プールの水が干上がっている」と証言。米政府は水がないことを前提に、昨年3月16日、在日米国人に対し、日本政府が出した避難範囲(半径20キロ・メートル)を大幅に上回る、半径50マイル(約80キロ・メートル)の退避勧告を出した。NRCのボーチャード事務局長も同日、ヤツコ委員長に「これがもし米国で起きたら、50マイルにするだろう」と助言したという。

(2012年2月22日12時40分 読売新聞)
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米当局 メルトダウン想定して対応
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米当局 メルトダウン想定して対応
2月22日 19時30分

アメリカ原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故発生直後の委員会内部のやり取りを記録した議事録を公表しました。この中では、アメリカ当局が、事故発生から5日後には、最悪の事態を想定すると1号機から3号機までの3つの原子炉がすべてメルトダウンする可能性もあるとして、日本政府が付近の住民に出した避難・屋内退避指示よりも広い範囲の勧告を行うよう提起していたことが分かりました。

アメリカ原子力規制委員会は、21日、東日本大震災が発生した去年3月11日から10日間にわたる、委員会内部の電話などによる緊急会議のやり取りを記した3000ページ以上にわたる議事録を公表しました。
それによりますと、事故発生から2日後のアメリカ東部時間12日には、福島第一原発の敷地内の周辺でセシウムなどが検出されたことが分かったことから、少なくとも原子炉内部で部分的な炉心損傷が起きている可能性があるなどとして、発電所から半径50マイル=およそ80キロ圏内に避難勧告を出すべきはないかと、幹部が原子力委員会に対して進言していたことが分かりました。
さらに、16日には、原子力規制委員会のヤツコ委員長が、最悪の事態を想定すると、1号機から3号機までの3つの原子炉がすべてメルトダウンする可能性もあると指摘し、また、ボーチャード事務局長が、「同じ事態がアメリカ国内で発生すれば、原発から50マイル以内には避難勧告を出すのが妥当だと思われる」と述べて、日本政府が福島第一原発の付近の住民に出した半径20キロ圏内の避難指示、20キロから30キロ圏の屋内退避指示よりも広い範囲の勧告を行うよう、委員会に提起していたことが分かりました。
今回、公表された議事録は、アメリカの規制当局が福島第一原発の事故を受けてどのような初動対応を行ったかを示す資料だけに、関心を集めるものとみられます。

錯そうする情報

今回公開された議事録からは、事故直後の情報の錯そうぶりも伝わってきます。3月16日の早い段階では、東京で対応に当たっている専門家チームのメンバーが、「東京電力から、4号機の使用済み燃料プールに水が残っていないとの情報を得た」として、とにかく注水を急ぐべきだとしています。しかし、ヤツコ委員長らが、50マイル圏内の避難勧告を出すと決めたあと、同じ日の遅い時間になって、「東京電力は、燃料プールに水が残っていないとは言っていない」という情報がもたらされ、委員長が、正確な情報を改めてスタッフにただす様子もうかがえます。
専門家チームのカスト代表は、「東京電力が扱うには、あまりに問題が大きすぎる」と漏らし、日本側との間で、情報が錯そうしていたことをうかがわせています。

議事録とは

公開された議事録は、原子力の安全規制を担当する原子力規制委員会が、アメリカとして、東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応を検討するために開いた電話会議などの内容を記録したものです。議事録は、アメリカの情報公開法に基づいて公開され、事故が発生した3月11日から20日までの10日分、合わせて3200ページ余りに上ります。
議事録には、原子力規制委員会のトップであるヤツコ委員長と、日本に派遣されていた担当者などとの間で交わされたやり取りが詳細に記され、日本側から得られた福島第一原発に関する情報などを基に、委員会が日本に滞在するアメリカ人の避難などを検討していった様子がうかがえます。一方、議事録では、日本にいる担当者と当時の北澤防衛大臣ら防衛省幹部とのやり取りを記した部分など一部が黒く塗りつぶされ公開されていません。非公開の理由について、委員会側は、「外国からもたらされた情報で機密に当たる」と説明しています。
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